先輩、下積みって意味あるんですかね?
あるテレビコマーシャル
「先輩、下積みって意味あるんですかね?」
「そんなん俺だって分かんねーよ」
下積みってなに?
まず、下積みを語る上で見てる方と僕の「下積み」の定義を一致させましょう。
したづみ【下積み】
①他の荷物の下に積むこと。また,他の物の下に積まれること。 ↔ 上積(うわづ)み
②人の下に使われていて目立たない地位にあること。能力などをふるう機会に恵まれないこと。また,その人。 「 -の時代が長かったのが彼の大成を助けた」
大辞林から引用するとこんな意味です。それによく言われるのがこんなフレーズ。
- うなぎ屋は「 串打ち3年、裂き8年、焼き一生」
- 寿司屋は「飯炊き3年握り8年」
表舞台に立つまでには長い長い時間がかかるよという意味の言い回しにすぎないので、実際このとおりやられているかは解りませんが、串打ちに3年は長過ぎだろうと感じますね。
ネットから読み取る下積み観
高知大好き イケダハヤト氏の下積み論
ブログをやっている人ならご存知のイケダハヤト氏。超強気な意見の目立つ方ですが、割りかし控えめに「下積み」を否定しています。
「下積み3年」の背後には「若いヤツは未熟だ」という、上から目線も隠れています。
しかしながら、若い=未熟というのは、上の世代の盲目的な自己肯定にすぎません。例えばデジタルツールへの肌感覚、例えばこれからの時代を読む能力、例えば若者世代へメッセージを届ける能力などなど、僕ら世代の方が優れていることは、それこそ山のようにあります。
「下積み3年」という言葉を受入れるということは、「自分は未熟だ」と、自分自身に烙印を押してしまうことです。そんなことはありません。全部が全部、上の世代に劣るわけないじゃないですか。若い世代だからこそ持っている武器を意識し、せめて精神的には、上の世代とのフラットな関係を意識すべきだと思います。表面上の態度は装ってもいいですが、心を折ることはありません。
時代の風雲児 堀江貴文の下積み論
ホリエモンって時点で答えが分かるかと思いますが、下積み完全否定です。「飯炊き3年握り8年」という寿司業界の慣習をボロクソに言っています。寿司屋で10年修行するなら、寿司アカデミーで数ヶ月ノウハウを学んで独立しろと。
「コロンビアで寿司屋を開きたいのですが、どう思いますか?」という質問に対して「いいんじゃないですか。寿司アカデミーで数ヶ月でノウハウを学べばいい」「センスがある人は独学で学べる」とコメント。従来の「一人前の鮨職人になるためには何年も修行が必要」という考え方は間違っていると一蹴した。
時間を大事にしない奴らが多いと感じるコメントが並ぶ。技術習得は接客や素材選びなども含めた話。集中力とセンスがあれば数ヶ月でも一流になれると思う。銀座でもやれる人はでてくると思う。
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2015年1月7日
ホリエモン「『寿司の10年修行』不要論」に大賛... http://t.co/9yqCgX7HFj
バカなブログだな。今時、イケてる寿司屋はそんな悠長な修行しねーよ。センスの方が大事
— 堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2015年10月29日
寿司職人の“飯炊き3年握り8年”は時代遅れ? ホリエモンの斬新な考えとは 求人@飲食店.COM https://t.co/ST0fzYsHYU
著名人の下積み論にしても、一般人のブログを見ても、「下積み」に対して否定的な意見がネットには蔓延っています。強気な意見を言った方がネットでは注目を浴びるという今の風潮も影響しているかとは思いますが、「下積み」というものは基本的に好意的に捉えられていない様です。
ただ、イケダ氏、堀江氏ともに、何かにつけて簡単に成功できてしまう程の能力を持つ、特別な人間だということには注意すべきでしょう。
天才芸人 松本人志氏の下積み論
ホリエモンの下積み観に対して一定の理解を示しつつ、松本氏はワイドナショーでこんなことを言っています。
何も間違ってないんですけど、なんかモヤモヤっと何でするんだろと思うと、多分この人が寿司の皿1枚も洗ったことがないからやと思うんですね。凄い寿司の名人って言われる人が全く同じセリフを言うたら、誰も何にも文句もないし、気持ち良く聞けるんですけど。だからたぶん言う人が違うんやろうな。セリフは間違ってないと。(略)ただ、僕の意見は参考にならない。僕はやっぱり…天才なのでね。
シンプルだけど的確と感心。そのとおりですよね。少なくとも天才に下積みはいらないと思います。20代で企業してお金を稼げる能力がある人はサッサと起業すれば良いし、味覚センスや鮮魚の目利きの能力が備わっている人は最低限の包丁さばきを学んで、寿司屋を開業してしまった方が早いでしょう。繰り返しますけど天才ならばね。
で、下積みって意味あるんですかね?
色々考えましたがやっぱり意味ないと思います。
要点を押さえて出来る様になったら下積みなんて卒業すべきです。間違っても「飯炊き」を3年もやっててはいけません。他店にいるライバル達にはどんどん置いてかれるでしょう。それに「握り8年」ってどんたけ長いのさ。8年やっても伸びない奴は伸びないし、伸びる奴は1年経たずに一流になれるでしょ。
ただ、現実的に雇われちゃってる人は、下積みを卒業したくても簡単には出来ません。だって普通に考えればそうでしょ。従業員20人の鰻屋でうなぎを焼く人は1人か2人。鮨屋のカウンターで握る人もそれくらい。ある企業に営業が100人いたら、商品企画に携わるのは数人程度。貴方が皿洗いを卒業してサッサと寿司を握りたいと思っても、そのポジションには順番待ちの列が出来ているのというのが現実です。特別な能力を持っていれば引っこ抜かれるかもしれませんが、そうでなければ行列に並ぶことになります。
「下積み」時代を長くすることで得する人っているの?
雇ってる側の観点で考えれば、早々と寿司を握らせるなんてリスクでしかないでしょうね。だって、若い奴に寿司屋のノウハウを全部覚えられたら辞めちゃいますもん。1〜2年でノウハウ盗んでサッサと独立。短期間勤めただけではその店に恩もないでしょうから、近所に開業されちゃったりしてね。
だから、誰かがやらなければならない雑務を新人がやらされて、ある程度長く勤めて、こいつは辞めないっていう信頼関係を少しは築けた奴が美味しい仕事をやるっていうね。まっある程度やむを得ないのかなと。
つまり、「下積み」の美学って経営する側の都合で作られてきた文化であって、あくまで経営者側が得する制度だと思います。だから、雇われ続ける必要がない有能な人はそのシガラミに囚われていては馬鹿みたいだし、普通な人はそのシガラミの中で上手いことやるしかないんです。
自分の店を開くなどのゴールが見えてる人は寿司アカデミーに通えっていうのは、ひとつの選択肢として正解だと思います。ただ、仮に開業まで短期間で突っ走り経営者となったとして、従業員が離れていかないカリスマ性があればまだしも、そうでない人は結局「飯炊き3年握り8年」なんていう下積み論を社員たちに対し語って囲い込むなんてことになるかもしれませんね。その方が経営は楽でしょうから。
まとめ
先輩、下積みって意味あるんですかね?
- 君が天才なら意味ないよ。サッサと次のステージを目指しなさい。
- 君が凡人なら我慢が必要かもね。
- 「飯炊き3年」なんて下積みの美学を間に受けない様に。あれは経営者の都合だよ。
- 君が将来経営者になるなら、社員にノウハウ盗まれて逃げられない様にね。
- ノウハウ盗まれても構わないくらいの飛び抜けた実力が君にあれば安心だよ。
- 君が凡人なら飛び抜けた実力は無いと思うけど。
と超凡人な僕は思うよ。
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