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みなケチブログ

皆がケチって教えてくれない本当のことが書いてあるブログ

金城一紀「GO」を読みました

あらすじ

北朝鮮にルーツを持ち、人より少し俯瞰的な視点を備えた物凄く喧嘩の強い在日朝鮮人である高校生の話。
 
その青年は、子供の頃から朝鮮人学校に通いながらも授業で教えられる金日成絶対主義的な教育に疑問と違和感を抱きながら育ちます。盲目的に祖国に忠誠を誓い、日本に住みながら日本人を敵視する彼らとは相いれずに。
彼は中学校卒業を機に本来生きていくはずのレールを自ら外れ、在日朝鮮人が生きる世界を飛び出し、日本の普通高校へと進学を果たします。

 

賢明な彼は恐らくそうなることが解っていたでしょう。でもそれを選んだのです。

 
日本で迫害を受ける立場として団結する朝鮮人からすれば、レールを外れ日本人に歩み寄った彼は裏切り者に過ぎません。
更に、日本の高校に通い日本人を理解したくとも日本人にも差別されてしまう彼。理解者はいても、安易な道ではありませんでした。
 
日本人からも朝鮮人からも冷たく睨まれ、世界のなかで自分が属するところのない彼の苛立ちは募ります。自分は一体何者なのか?
 
青春の真っただ中を生きる高校生の恋愛と、在日朝鮮人が苛まれる差別と、ルーツや属性に対する葛藤をユーモラスにテンポよく描いた小説が2000年に直木賞を受賞した「GO」という作品です。
 

2001年には映画化

翌年には豪華なキャストで映画化もされましたね。
監督:行定勲

 

GO [DVD]

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感想:良いところ

文体も平易で読みやすく、余計な描写なども少なく僕好みの展開の早い作品です。また、僕の知らない日本における日本、北朝鮮、韓国の関係や、主人公が話す人類学などの雑学が結構興味深かったりします。
 

感想:悪いところ

一方、引っかかるのは、登場する日本人のイメージがキッチリと極悪非道に描かれていて、主人公が持つ俯瞰性を著者が持ち合わせていない様に思える点です。
義務を果たさず権利を主張すれば叩かれるのは当然です。それを一律に差別という言葉で済ませ時代を超えて被害者面するのはズルいだろと言う感覚が、今の日本人が在日外国人に対して持つ苛立ちの根底にあると思うのですが、まさに両者が理解しあえない部分がこの小説の著者からは滲み出ている様に思えます。むしろ僕からすれば、逆に日本人を冷徹に描くことにより、それこそ差別的な描写がなされているとすら感じます。文体や展開自体は面白いけども、読むのであれば途中で少し不愉快な思いをする覚悟は持たなければならないでしょう。
 

まとめ

歴史的な真実など当然僕には解りません。
ただ、この小説の肝は、どこにも属さず国籍なんていう制度を否定する高校生が自分のルーツに対する考えを信じ、それを否定する社会との心情的な闘いを描いた部分にあるはずです。それにも関わらず、日本人の姿に対してだけは朝鮮社会の固定観念をしっかりこびりつけたうえで完成させているところが、この良作の残念で仕方がない部分なのでした。

 

 

 

 

GO 角川文庫

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